今年から介護プロフェッショナルキャリア段位制度のアセッサー講習の受講料が有料になって一人18,500円がかかる。薄いテキストと、簡単なeラーニング、1日の集合講習の費用としては高すぎるのではと思った。中身の良さは分かるが民間の講習ではないのだからもう少し低めに設定してもいいのではなかろうか。2年間は無料だったので受講者を増やすことはできたが、この金額設定では高すぎるので受講者は減るのではないかと思う。シルバーサービス振興会が厚生労働省から委託をされている事業なのはよく分かるが、これでは普及についての本気度が感じることができない。参加者としての経験で言うとあのプログラムなら8,000円が限界だと思う。公的関与を考えるなら半額の4,000円でもいいと思う。制度自体の狙いはすばらしいけれども、普及をさせようという戦略がないと言ってよい。このままでは後5年ぐらいで消滅しそうな制度になるのではないのかと危惧してしまう。

6月12日にキャリア段位制度のホームページがリニューアルされた。アセッサー数、レベル認定者数などがトップページで確認できる。3月31日現在でアセッサーは7,817名、6月1日現在でレベル認定者447名、レベル認定見込み者数4,853名と公表されている。これを見れば何が問題なのか一目瞭然である。アセッサーの数に比較してレベル認定者の数があまりにも少ない。どうしてこのようになるのかを分析してその原因を除去する施策がないかぎり、いつまでたってもレベル認定者は増えないだろう。介護福祉士だけでも平成25年段階で1,183,979人かおり、毎年10万人程度が増えている。介護福祉士を対象とした場合、キャリア段位のレベル認定者と比較するとその差が大きすぎる。介護福祉士の0.04%しかキャリア段位のレベル認定者がいないのだ。これで普及させたいというのは非現実的な発想である。これでは100年ぐらいしないと普及しないのではと思ってしまう。当たり前だけど100年後の未来にこの制度が存続しているとは思えない。

特養のアセッサーは1,569人、レベル認定者は109人。レベル認定者が6.9%しかまだいない。弘済院第1特養ではアセッサーが12人、レベル認定者は6人なのでひとまず50%である。1施設で12人のアセッサーがいるというのもめずらしいと思うが、制度開始当初からこの制度のおもしろさと重要性をわかったから力を入れてきたのだ。弘済院第1特養は270人という大規模施設なので介護職員だけでも120人ほどいる。それを考えるとアセッサーの数はもっと必要と思っている。レベル認定者を増やす努力はしているが現実的にはなかなか増やすことができない。日常業務の中で評価をする時間を設けにくいこと、レベル認定者に対する資格手当などが未整備なこと、アセッサーの評価作業に対する金銭的補助がないこと、そしてアセッサーがせっかく作成して提出した期末評価票が事務局側で訂正を受けたりしてなかなか審査をしてもらえない状況がある。

正確な評価という作業は時間がかかる。これを無償でやらせようとするから評価作業の時間を単純に設けることができない。一言で言えば他人のためにただ働きをするみたいな印象なのだ。これではがんばってやろうと言っても、意欲が出てこないのも当然だと思う。アセッサーの質や外部評価審査員の質を保つことも大切ではあるけれど、制度を構築していく上に何が必要なのかという優先順位が見えていないのではと思われる。質が良くて正しければ普及をするなんて思っていたら大間違いなのだ。制度を推進していくためのインパクトとインセンティブが必要になってくる。そこが欠けているからこの現状に甘んじているのだと思う。

こんな稚拙な方法ではキャリア段位制度が普及するとは思えない。介護の質の改革のためにはこのキャリア段位制度は必要である。キャリア段位を積極的に進めていきたい施設だからこそ、この現状を本気で憂いてしまう。関係者の意欲が高いこと、目標設定レベルも高いのもよく分かる。しかし、このまま何の改革もなければキャリア段位制度は消滅してしまう可能性が大きい。そうさせないための関係者の具体的な改革を望みたい。

リニューアルされたトップページにはレベル認定者の人数が掲載されている。制度の普及度を示すための措置だと言うことが分かるが、誰が見ても普及していないことが分かるのも悲しいけれども数字のあり方なのだ。少数精鋭、孤高を守りながら自分たちは正しいことをしているという傲慢さが、制度の普及を妨げている。謙虚になりながら制度普及に向けた制度設計をもう一度見直してもらいたい。良い制度なのでこのままではあまりにも惜しい。何とかならないものなのだろうか。


弘済院第1特養は大阪府吹田市にある270人定員の特別養護老人ホームです。情報公開に力を入れています。ホームページは介護保険施設の中では一番おもしろいものにすることを目標にしています。

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